「自分が亡くなったあと、子どもにお墓の掃除や管理費、墓じまいまで残したくない」と考えるなら、代々引き継ぐ一般墓を新しく用意する必要はありません。
候補になるのは、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、合葬墓、海洋散骨などです。
ただし、「承継者不要」「永代供養」と書かれていれば、すべて子どもの負担がなくなるわけではありません。
選ぶときは、次の4点を確認すると整理しやすくなります。
- お墓を管理する人が将来必要か
- 年間管理費が将来も発生するか
- 遺骨を個別に残したいか
- 子どもがお参りできる場所を残したいか
「子どもに管理を残さない」ことを最優先するなら、墓石があるかどうかではなく、自分の死後に誰が何をし続ける必要があるのかまで確認して選ぶことが大切です。
子どもに管理を残したくないなら5つの供養方法がある
主な選択肢を整理すると、次のようになります。
| 供養方法 | お参りする場所 | 将来の墓守 | 遺骨の扱い |
|---|---|---|---|
| 永代供養墓 | あり | 原則不要 | 個別供養後に合祀される場合あり |
| 樹木葬 | あり | 不要の商品が多い | 個別型・合祀型などがある |
| 納骨堂 | あり | 商品による | 一定期間後に合祀される場合あり |
| 合葬墓・合祀墓 | あり | 原則不要 | 他の人の遺骨と一緒に納める |
| 海洋散骨 | 墓としては残らない | 不要 | 海へ散骨する |
重要なのは、「永代供養」「樹木葬」「納骨堂」が完全に別々のものとは限らないことです。
たとえば、永代供養付きの樹木葬や、一定期間は納骨堂に個別収蔵し、その後に合祀する契約もあります。
名称だけでは子どもの負担が分からないため、実際の契約内容を見る必要があります。
お参りする場所を残したいなら永代供養墓や樹木葬
「墓守はさせたくない。ただ、子どもが行きたいときに手を合わせられる場所は残したい」という場合は、永代供養墓や承継者不要の樹木葬が候補になります。
寺院や霊園などが墓地を管理するため、一般墓のように子どもが代々墓地を承継することを前提としないものがあります。
ただし、「永代供養だからずっと個別のお墓に入っていられる」とは限りません。
一定期間だけ個別に納骨し、その後は他の遺骨と一緒に合祀する契約もあります。
契約前には少なくとも、
- 個別に納骨されるのはいつまでか
- 最終的に合祀されるのか
- 合祀後に遺骨を取り出せるのか
- 年間管理費があるのか
- 子どもが契約を引き継ぐ必要があるのか
を確認します。
厚生労働省も墓地の契約について、料金や使用期限などを明確にし、利用者へ十分説明することが必要だとしています。
樹木葬なら必ず負担がなくなるわけではない
樹木葬は墓石の代わりに樹木や草花などを墓標とする供養方法ですが、「樹木葬=管理費なし・承継不要」と決まっているわけではありません。
個人や夫婦単位で区画を使用するタイプもあれば、最初から合祀するタイプ、一定期間後に合祀するタイプもあります。
子どもの負担を減らすために選ぶなら、見た目よりも、
「契約者が亡くなったあと、子どもが更新や管理料の支払いを続けなくても供養が完了するか」
を確認する方が重要です。
納骨堂は「建物の中だから管理不要」とは限らない
納骨堂も、お墓を残したくない人の候補になります。
屋内でお参りできる施設などもありますが、納骨堂だから自動的に子どもの負担がなくなるわけではありません。
契約期間が設定されていたり、年間管理費が必要だったり、契約終了後に合祀へ移されたりすることがあります。
「子どもに残さない」という目的なら、施設の豪華さより、
- 使用期間
- 管理費
- 更新の有無
- 契約終了後の遺骨の行き先
- 承継者が必要か
を先に確認します。
合葬墓なら墓を継がずに供養できる
最初から個別のお墓を持つことにこだわらないなら、合葬墓・合祀墓も選択肢になります。
複数の人の遺骨を同じ施設で供養するため、個人のお墓を子どもが管理し続ける必要がない方式が一般的です。
寺院や民間霊園だけでなく、自治体が合葬式の墓地を設けている場合もあります。
ただし、利用できる人の住所や年齢、遺骨との関係などの条件は施設ごとに異なります。
また、他の遺骨と一緒に納めたあとでは、自分の遺骨だけを取り出せなくなる場合があります。
「あとからお墓を作り直す可能性がある」という人は、合祀する前によく考える必要があります。
お墓そのものを残したくないなら海洋散骨
「墓守を残したくない」だけでなく、「墓そのものを残したくない」という希望が強いなら、海洋散骨は目的に合いやすい方法です。
火葬後の焼骨を粉状にして海へ散骨するため、散骨後に墓地を管理したり、年間管理費を払い続けたりする必要はありません。
一方で、一般的なお墓のような「ここに遺骨がある」という場所は残りません。
そのため、自分は散骨を希望していても、子どもが「たまには墓前で手を合わせたい」と考えている場合には気持ちのずれが生じる可能性があります。
全部を散骨せず、一部を手元供養として残す方法もあります。
厚生労働省が公表している散骨事業者向けガイドラインでは、焼骨を形が分からないよう粉状にすること、海洋では海岸から一定の距離を取ること、地域住民や漁業者などへ配慮することなどが示されています。また、自治体の条例なども確認する必要があります。
手元供養だけでは子どもの負担は終わらない
遺骨を小さな骨壺などに入れて自宅で供養する「手元供養」もあります。
お墓を建てずに済み、自分の近くで供養できる方法ですが、「子どもに何も残さない」という目的には注意が必要です。
自分が亡くなったあと、その遺骨をどうするかという問題が次の世代へ移るからです。
手元供養を選ぶなら、
「最終的には合祀する」
「自分が亡くなったときに一緒に納骨する」
「残した遺骨も散骨する」
など、最後の行き先まで決めておいた方が子どもの負担を残しにくくなります。
「生前契約したから安心」ではなく亡くなった後の手続きまで決める
子どもの負担を本当に減らしたいなら、供養方法を選ぶだけでは足りません。
たとえば生前に永代供養墓を契約して代金を払ってあっても、自分が亡くなったあとに、
- 契約先へ死亡を連絡する
- 火葬後の遺骨を受け取る
- 必要書類をそろえる
- 遺骨を施設へ持っていく
といった作業が必要になることがあります。
海洋散骨でも同じで、生前に希望を書いておくだけでは誰かが実行しなければなりません。
そのため、生前に決めるなら「どこに入るか」だけではなく、
「亡くなったあと誰がどこへ連絡すれば供養が完了するのか」
まで整理して家族へ伝えておくことが重要です。
子どもに判断を任せないこと自体が、大きな負担軽減になります。
すでに先祖代々のお墓があるなら墓じまいも考える
自分のお墓を新しく作らないだけでは、すでにある先祖のお墓の管理は子どもへ残ります。
「自分の代でお墓を終わらせたい」という場合は、現在のお墓を整理して、納められている遺骨の行き先も決める必要があります。
現在のお墓から別の墓地や納骨堂へ遺骨を移す行為は「改葬」と呼ばれ、市町村長の許可が必要です。
改葬許可は、原則として現在遺骨がある墓地・納骨堂の所在地を管轄する市区町村へ申請します。
一方、散骨は法律上の「他の墳墓または納骨堂へ移す改葬」には当たらないとして、改葬許可を不要としている自治体があります。散骨を予定している場合は、現在の墓地管理者と自治体の双方へ、遺骨を取り出す際に必要な手続きを事前に確認しておくと確実です。
墓石を撤去する前に、遺骨をどうするのかを決めておくのが基本です。
子どもの負担を減らしたいなら「何を残したいか」から決める
供養方法の名前から選び始めるより、家族に何を残したいかで考えると決めやすくなります。
「お参りする場所は残したいが、墓守はさせたくない」
→ 承継者不要の永代供養墓、樹木葬、合葬墓など。
「屋外のお墓はいらないが、遺骨を納める場所は残したい」
→ 永代供養付きの納骨堂など。
「お墓も遺骨の管理も残したくない」
→ 海洋散骨など。
「お墓はいらないが、少しだけ遺骨を身近に残したい」
→ 散骨と手元供養を組み合わせる方法。
このように考えると、必ずしも「お墓を残すか、何も残さないか」の二択ではありません。
契約前に最後まで確認する
子どもに負担を残さないことが目的なら、パンフレットに「永代供養」「承継者不要」と書かれているだけで判断しない方が安全です。
契約前に確認したいのは、
- 自分の死後に承継者が必要ないか
- 年間管理費はいつまで必要か
- 個別供養はいつまで続くか
- 最終的に遺骨はどうなるか
- 合祀後に遺骨を取り出せるか
- 亡くなったあとの納骨手続きを誰が行うか
- 追加費用が発生しないか
です。
墓地や永代供養をめぐっては、料金や解約などについて消費生活相談も寄せられています。契約内容と費用は口頭だけでなく、規約や契約書で確認しておく方が安心です。
「子どもに迷惑をかけたくない」のであれば、単に安い供養方法を選ぶより、自分が亡くなったあとに子どもが管理・支払い・判断を続けなくても済む仕組みになっているかを確認することが重要です。
お参りする場所を残したいなら永代供養墓や承継不要の樹木葬、墓そのものを残したくないなら海洋散骨など、希望によって適する方法は変わります。
まず家族に「お墓を残したくない」と伝えたうえで、お参りする場所と遺骨を残すかどうかを決めると、候補を絞りやすくなります。
出典
厚生労働省|墓地、埋葬等に関する法律の概要
厚生労働省|墓地、埋葬等に関する法律施行規則
厚生労働省|墓地経営・管理の指針等について
厚生労働省|散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)
国民生活センター|墓・葬儀サービス
